ブログ・コラム
2023.05.30
住まいの設計デザインで提案・採用する内装扉(建具)検討の事、サイズ感と印象、使い勝手と融合する検討要素と設計デザインの意図。
- カテゴリ:
- 素材・建材・打ち合わせ・検討
理屈だけではなくて感性をもとに
よく考えた住まいは暮しが楽しくなる。
※空間の間仕切りを透明な引き戸で開閉する空間展示(総合建材メーカーPanasonicショールーム大阪)
例えば、自身の可動領域とサイズ、
そして移動する際の状態を考える。
※空間の間仕切りを透明な引き戸で開閉する空間展示(総合建材メーカーPanasonicショールーム大阪)
標準的サイズと空間や用途、
イメージなどの要素を考えている
暮らしの空間構成。
各部屋や建物への出入口、
移動の場となる扉類・・・・・。
「建具」と呼びますが
それらの標準的な寸法があります。
※建具類の商品展示コーナー(総合建材メーカーPanasonicショールーム大阪)
家を建てる時に意外と困ってしまうポイント「建具」について、
寸法の事、建具の機能性などを
書いてみたいと思います。
※建具類の商品展示コーナー(総合建材メーカーPanasonicショールーム大阪)
建具の種類ですが、
玄関や室内のドアを思い返してみてください。
どのような扉(建具)が思いつきますか?。
一般的によくあるのは「開き戸」かと思います。
押すか引く事で開くタイプです。
このタイプは、
気密性が高い(音が漏れにくい・空気が逃げにくい等)
扉を収める場所が不要の為、
少ないスペースに設置可能で
扉を収める場所が不要の為、
スイッチやコンセントを
設置可能な壁が増えるといった
メリットがあります。
対してデメリットとして
扉開閉の可動スペースに物を置いたり、
コンセントを設置をして
なかなか使いにくい、
開閉の為に体の動きが大きくなるため、
高齢者や体が不自由な方にとっては
扱いにくいなどがあります。
住宅で開き戸が多いのは、
限られたスペースを使って
効率的な間取りにしやすい為です。
注文住宅を建てる際には
扉が開く向きとスイッチ等の位置など、
動線をよく考慮する必要がありますが、
それに限らず、状況に応じて
様々な建具提案を行っています。
引き戸と呼ばれるものもそうです。
例えば、
リビングと居室をつないだり
間を仕切ったりできる「可動間仕切り」
として使われているのを
ドラマのセットやインテリア雑誌、
Instagramやピンタレスト等で
よく目にするのではないでしょうか。
メリットとしては
開け放していても「バタン」と
閉まってしまうことがない事や
開閉時の可動スペースが無く
部屋を広く使えるスライドするだけなので、
高齢者や体が不自由な方にも
扱いやすいというところ。
デメリットとしては
開き戸に比べて気密性は低く、
音漏れや空気移動がしやすい事、
引いた戸を収める壁スペースが必要である事、
戸を収めるスペースには
スイッチやコンセントを設置できない事。
移動したりするシミュレーションを行うと
基本的には
引き戸の方が何かと利便性は高く感じます。
開き戸、引き戸の差は
建具の寸法にも関係します。
移動の際に
腕や足を頻繁にぶつける人はそういないとは思いますが、
急いでいたり荷物を持っていたりなどで
建具の幅がもっとあれば良いのに
と思うシーンは
意外とあるのでは?。
昔に比べて平均身長も高くなった現代では、
やはり「高くて広い」間口が過ごしやすい空間を
生み出すことが出来やすくなります。
ただ、やみくもに大開口にすれば
良いと言うものでもありません。
構造計算上、壁や耐震の工夫で
間取りに制限が生まれたり
全体のデザイン感に対して
不自然なサイズのバランスが悪い家になってしまったり、
良くない事も起こりかねません。
寸法は何を持って判断すればよいのか?。
横幅は大抵の場合、
住宅の中でトイレの扉が
一番幅が狭いですが、
例を挙げると建材・住宅設備大手の
LIXILでは標準規格が64.8cmです。
開く際の扉の移動領域と扉の厚みを見ると
有効寸法(実際に通れる限界寸法)は59cmくらいになるので、
肩幅が40~45cm前後の男性ならば
真ん中を通っても
両側7~9cm程度しか隙間がありません。
そうなると、
肩や手をぶつける事も
頻繁に起こるかと思います。
急いでいる時やまっすぐに出ない時
人は移動をショートカットしようとするので
移動領域を検討しておくことがヒント。
木造住宅で主流の「木造軸組工法(在来工法)」の
柱間(モジュール、柱芯から柱芯まで)が
基本的には910cm(約3尺)な事も
関係していると言えます。
この910cmのモジュールを
尺モジュールと呼びます。
ですが昔より体が大きい現代人としては、
全ての建具が64cmだと
狭苦しくて住みづらいですよね。
なので、現在では
尺モジュールも存在しつつ
メーターモジュール(モジュールが1000cm)や
間崩れといって
それぞれの空間で個別の寸法設定を行い
設計するなどします。
僕の場合は、内容に沿って
価値観を調整し「建具幅」や室内外移動の内容と
個人差を考慮しながら
最適解から「サイズ」を提案しています。
しかしそうすると、
日本では尺モジュールに
合わせた「建材」が多いため
建築費が上がってしまうデメリットもあります。
こちらも、
構造上無理のない範囲で幅を確保できるように、
最適な状態を考える事が大切。
重要なのは、
生活上必要な物の寸法と人のサイズ感、
どのようなパーソナルエリアを持って生活しているのか?
というところから紐解く建具寸法のバランスです。
極端な話、
例に出やすいのは車椅子です。
電動車いすなど特に幅のある車いすが、
リフォーム・リノベーションしても通ることができない、
どこかしらを壁に擦ってしまう、
などの体験をする方も多いかと思います。
お持ちの家具などと同様に
そういったところも
プラン(計画)の段階で
設計材料寸法のすり合わせをしっかりと行う事が重要。
なので、僕はプラン段階や
家づくり計画の具体化する前段階で
家具やインテリアの体感と含めて「暮らしの寸法」を
提案させていただいています。
寸法やサイズについては
具体化する前が実は重要なんです。
建具の様々な機能とデザインについて、
近年の建具は、
機能性・デザインの多様さなどの面から
様々な物が開発されています。
※造作二枚引き戸・Panasonic親子扉採用の事例(天井までのハイドア)
建具のイメージでも
随分と空間に変化が生まれます。
※Panasonic開き扉&引き戸採用の事例(天井までのハイドア)
サイズ感も含めて多くの要素を
どれだけ必要な要素として
吟味して具体化出来るのか?。
暮らしの空間の心地と質を左右する
内容でもあるので
丁寧な暮らしを考える要素として
扉の検討も重要です。
やまぐち建築設計室 建築家 山口哲央