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ブログ・コラム

2023.06.14

軒と庇が生み出す暮らしの風情と環境の良い空間計画、室内への恩恵と共に外部として外観の佇まいも風情よく心地よい要素の設計による価値観の提案。

カテゴリ:
設計の事・デザインの事

 

 

よく考えた住まいは暮しが楽しくなる。

 

 

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※数寄屋の趣をモチーフに軒と庇の深い和風住宅の外観

 

 

家の外観や性能、

暮らし方にも関係するのですが

屋根の軒や窓周辺の庇。

 

軒と庇について。

 

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※数寄屋の趣をモチーフに軒と庇の深い和風住宅の外観

 

 

その存在は知っていても、

違いも分からないし、

よく考えたこともないという方は、

意外と多いかもしれません。

 

ですが住宅を住みやすくするためには、

そのどちらの存在も大切です。

 

そんな軒と庇の役割や違いを少し。

 

 

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※数寄屋の趣をモチーフに軒と庇の深い和風住宅の外観

 

 

大きく軒を張り出した家を見かけると、

思わず見入ってしまう事があります。

 

許認可の可能な限り

敷地いっぱいに住宅を建て、

大きく軒を張り出せすことが少ないようにも思いますし

軒のない四角いデザインの家に、

人気が集まっている事もあるのかも知れません。

 

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※軒下の風情を楽しむ和風の暮らし提案

 

 

でも軒も庇も、

快適に暮らすためには意外と大切なのです。

 

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※夜の灯りを満喫しながら風情を楽しむ軒下空間

 

まずは「軒」。

軒とは外壁から飛び出ている

屋根の先のことをいいます。

軒の一番先端を「軒先(のきさき)」と呼び、

軒の裏側を「軒裏(のきうら)」、

軒の下になる場所を「軒下(のきした)」と呼びます。

 

したがって建物から軒が出ていない住宅の場合は、

軒下もなければ軒裏もありません。

 

そして「庇」とは、

窓や出入口の上に設けられた

小さな雨除けのことをいいます。

 

屋根が住宅の傘ならば、

庇は帽子だとイメージしていただければ

わかりやすいかも知れません。

 

屋根の延長上にある軒の長さは、

建物を雨から守る役割と同時に、

強い日差しから

家を守る際に関係します。

 

現代のように、

夏の暑さはエアコンで凌ぐということが

出来なかった昔は、

いかに涼しい家を造るのかが、

家を考える際の大切なポイントでした。

 

吉田兼好の『徒然草』の中にも

「家のつくりは夏を持って旨とすべし」と、

書かれているほどです。

 

勿論現代ではエアコンでの効果や

窓自体の高性能化もあり

遮熱や断熱など様々な恩恵もあります。

 

それでも自然環境の変化や

過ごし方によって

昔のように建物と人の過ごす環境を守る意味では

軒の長さと陽射しとの関係等も重要だったりします。

 

少し考える事にはなりますが、

軒の長さと日除けの効果について。

 

例えば天井高さ2.4mの部屋の外側に

長さ0.9mの軒を設けると、

夏至の南中時において

室内に直射日光が差し込むことを防ぐことが出来ます。

 

ですが陽射しが欲しい

冬至の南中時には

窓の約1.8mの高さまで陽が当たり、

部屋の奥約3.0mの所まで陽を招き入れることが可能です。

 

夏は陽を避け、

冬は陽を家の奥まで招くことが出来る

深い軒は、

日本の気候風土に適した

大切な家のパーツでもあるともいえます。

 

ちなみに長い軒を設けることによって、

室内が暗く感じてしまうことに配慮して、

軒の一部に天窓や

開口を設けて明るさを確保したり、

あるいは部屋の

外側に設ける庭に反射の良い

白に近いタイルや砂利を敷き詰めたり、

水盤を設けるような工夫がも

過ごし方の価値をあげるプランの考え方にもなります。

 

また最近では

折り畳み式の日除けを設けることで、

夏の暑さ対策に工夫することもあります。

 

軒また深い軒を設けることにより、

半分屋外でもあり半分屋内として利用できる、

「中間領域」と呼べる

軒下空間を造りだすことが出来ます。

 

庭の緑を愛でながら、

涼しい風を感じ、

軒下に吊るした風鈴の音に

癒されることも出来るかもしれません。

 

次は「庇」の事を少し・・・・・。

 

庇のことを帽子のような物と書きましたが、

この庇にも「下屋(げや)」「土庇(どびさし)

「眉庇(まびさし)」「霧除け(きりよけ)」と、

いくつかの種類があります。

 

下屋は屋根とは別に

一階の部分に設ける庇のことです。

 

土庇は柱を建て、

土間の上に大きく被さるように造られた庇。

 

眉庇とは、

窓の上に小さく設けられた

簡易的な物をこう呼び、

霧除けもほぼ同じ形をしています。

 

ただし霧除けの場合には、

窓の横側に小さな袖壁を設け、

雨や霧が窓から入って来ることを防ぐことを

目的とした物もあります。

 

庇は窓の直ぐ上に設けるので、

出の長さが短くても

意外と日除けの効果があります。

 

例えば夏至の南中時に、

高さ2.0mの掃き出し窓に

陽を入れたくないと考えた場合には、

0.6mの庇を設けることで対応できます。

 

高さ1.1mの腰高窓ならば

0.3mの庇を設ければ大丈夫です。

 

最近ではシャッター式の雨戸を設置する住宅も増えていますが、

上部にあるシャッターボックスを

庇の代用品と考えた場合、

ボックスの出幅が0.15mあれば

窓の上部0.7m程度は陽を遮る効果があります。

 

車の窓にもルーフ・バイザーが付いていると、

弱い雨ならば少しだけ

窓を開けて換気したりすることが出来ますよね。

 

庇とは、そんな役割の物です。

 

狭い土地に建物を目いっぱい建てようと考えた場合、

大きな軒を張り出すことが

難しい場合もあるかもしれません。

 

建物のデザイン上、

大きな軒が似合わないケースもあるかもしれません。

 

それから庇の場合、

小さなパーツで簡単に取り付けられていることがありますが、

外壁との納まりなどを確実に施工しないと、

雨漏りの原因になってしまうことも考えられます。

 

軒も庇も普段は目立たない小さな部材ですが、

どちらも快適に暮らす際には、

大きな役割を担うことが出来る部材です。

 

土地の条件や過ごし方に持たせる意味

そして環境をどのように考えて

住まい造りにとりいれるのか?

 

御自身の家に採用すると、

より良い家となり、

楽しく快適な生活を送ることが出来るのかは、

家づくりにかかわる設計者と

よく御相談された上で採用の可否を判断する事が大切です。

 

過ごす環境と佇まいを丁寧に。

 

やまぐち建築設計室 建築家 山口哲央

 

 

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